部下の身だしなみを注意しにくいときに|管理職が指導前に整えたい3つのこと
部下や後輩の髪型や服装、香水などが気になっても、
「どのように伝えればよいのだろう」
「本人を傷つけてしまわないだろうか」
「ハラスメントだと受け取られないだろうか」
と考え、なかなか注意できないことがあります。
もちろん、本人への伝え方は大切です。
しかし、身だしなみ指導が難しくなる原因は、指導者の伝え方だけにあるとは限りません。
職場の基準が曖昧であったり、管理職によって判断が異なっていたりすると、どれほど言葉を選んでも、本人には「上司の好みを押しつけられた」と受け取られる可能性があります。
身だしなみについて適切に指導するためには、個人への伝え方を考える前に、職場として指導しやすい環境を整えておくことが大切です。
1.職場の基準を言葉にする
「清潔感のある服装」
「社会人らしい髪型」
「派手になりすぎないようにする」
このような表現はよく使われますが、人によって受け取り方が異なります。
本人は職場の基準に合っていると思っていても、上司は「ふさわしくない」と感じていることもあります。
この状態で注意すれば、本人から「どこが問題なのですか」「ほかの人と何が違うのですか」と尋ねられても、明確に説明できません。
身だしなみの基準を定めるときは、単に禁止事項を増やすのではなく、業務上なぜ必要なのかを整理します。
例えば、
- 接客時に表情が見えるよう、髪が顔にかからないようにする
- 商品を傷つけないよう、安全に作業できる長さに爪を整える
- 香りに敏感なお客様にも配慮し、勤務中の香水は控えめにする
- 衛生や安全のため、業務中は装飾品を外す
など、仕事との関係が分かるように示します。
また、以前から続いている規定であっても、現在の仕事内容や職場環境に合っているとは限りません。
「これまでそうしてきたから」という理由だけでなく、今の職場に本当に必要な基準なのかを、定期的に見直すことも必要です。
言葉だけでは伝わりにくい場合は、写真やイラストなどを用いて、望ましい状態を共有する方法もあります。
2.指導する人によって基準が変わらないようにする
同じような服装をしていても、ある社員は注意され、別の社員は何も言われない。
上司によって、注意される内容が異なる。
このような状態では、本人が指導内容に納得しにくくなります。
身だしなみについて個別に伝える前に、ほかの社員にも同じ基準を適用しているかを確認しましょう。
立場、性別、年齢、雇用形態などによって、無意識に判断を変えていないかを振り返ることも大切です。
職場全体に関わることであれば、特定の社員だけに注意するのではなく、朝礼やミーティングなどで基準を再確認する方法もあります。
ただし、口臭や体臭など、個人のプライバシーに関わる内容まで全体の話題にすると、本人が自分のことだと気づいたり、周囲が詮索したりする可能性があります。
全体に伝える内容と、個別に伝える内容を分けることも必要です。
管理職や教育担当者の間でも、
- どのような状態であれば声をかけるのか
- 誰が本人に伝えるのか
- どこまで改善を求めるのか
- 改善されない場合はどのように対応するのか
を共有しておくと、指導者による判断の違いを減らせます。
3.指導者が一人で抱え込まない仕組みをつくる
身だしなみには、本人の好みだけでなく、体質や治療、服用している薬、障がい特性、宗教上の理由などが関係している場合があります。
特に、髪や肌、においなどについては、本人の努力だけではすぐに改善できないこともあります。
このような場合に、直属の上司や教育担当者だけで原因を判断し、対応を決めることは適切ではありません。
判断が難しいときに相談できる人事・労務担当者や責任者を決めておき、どのような場合に相談するのかを共有しておく必要があります。
また、一度伝えても改善されない場合に備えて、
- いつ、どのような状態を確認したのか
- 本人に何を伝えたのか
- 本人からどのような返答があったのか
- どのような改善方法や期限を確認したのか
など、必要な範囲で記録を残すことも大切です。
記録は、本人を責めるためのものではありません。
指導内容が適切だったか、本人に正しく伝わっていたか、ほかの支援や配慮が必要ではないかを、職場として確認するためのものです。
身だしなみ指導を、問題が起きたときだけの注意にしない
身だしなみの乱れを見つけたときだけ注意する職場では、声をかける側も、注意を受ける側も構えてしまいます。
入社時の説明や定期的な研修、身だしなみチェックリストなどを通して、普段から職場の基準を共有しておくことが大切です。
お客様をお迎えする前や業務を始める前に、各自が鏡を見て確認する習慣があれば、上司から注意される前に、自分で整えられるようになります。
身だしなみ指導の目的は、管理職が細かく確認し続けることではありません。
社員一人ひとりが、仕事や接する相手に合わせて、自分で身だしなみを整えられるようになることです。
そのためにも、まず職場として基準を示し、誰に対しても公平に運用し、判断に迷ったときに相談できる仕組みを整えておく必要があります。
職場の土台が整っていれば、個別に伝える際にも、上司個人の価値観ではなく、仕事上必要なこととして話しやすくなります。
実際にどのように伝えればよいのか
職場の基準や指導体制を整えていても、実際に本人へ伝える場面では、言葉選びに迷うことがあります。
noteの有料記事「部下の身だしなみ、どう注意する?関係を悪くしない伝え方と指導の基本」では、指導前に確認したい5つのことと、本人の考えを尊重しながら必要なことを伝える「6つのステップ」を、会話例とともにご紹介しています。
前髪・香水・制服・爪・口臭・体臭など、特に伝えにくいケースのほか、部下が納得しない場合や、一度伝えても改善されない場合の対応、職場で使える身だしなみチェックリストも掲載しています。
※本記事は、一般的な人材育成・コミュニケーションの観点から身だしなみ指導を解説したものです。個別の事案におけるハラスメント該当性など、法的な判断を示すものではありません。判断が難しい場合は、社内の人事・労務担当者や専門家へご相談ください。

